![]() |
![]() |
|
大地の祠 〜夜空の洞窟〜 |
![]() |
|
|
8. ラウェルスが扉を押し開け、三人は祭壇の間に足を踏み入れた。部屋の作りは今までの祠と全く同じだった。白い大理石の祭壇、その前に据えられた台座、そして部屋を照らすラトカーティス神の永遠の白い篝火。 まずレルディンが魔法のかかった細身の剣をすらりと抜き、台座を大きく迂回して祭壇の陰に身を潜めた。ナダはオニールの忠告でずっと手に持っていた手鏡をしまい、代わりにオニールの頭髪の蛇の血が入った小瓶を取り出した。それを右手に持ち、左手で左腰から短刀を一本抜き取った。ナダは両手利きだ。左手でも正確に短刀を投げられる。 二人が準備を終えたのを確認して、ラウェルスは台座に歩み寄った。こうやって全員の配置を終えてみると、ナダはラウェルスに庇われているのが分かった。もし何か不都合が起きたとしても、ラウェルスはナダの前にいる。これは同時に、ラウェルスがナダの投擲の腕前を信用しているということだ。ラウェルスは、ナダと標的である大地の精霊が現れるはずの場所の間に立っているのだから。ナダはきゅっと口を引き結び、精神を集中させた。 「行くぞ」 ラウェルスがそう言って、台座に手を伸ばした。 その指が台座に触れた瞬間、ラウェルスの目の前の中空に、人型の女性の姿が忽然と現れた。土色の肌に草色の長い髪――大地の精霊だ。 ナダはすかさず狙いを定め、蛇の血の小瓶を投げた。続けてそれを追うように一条の銀光が飛ぶ。小瓶はラウェルスの頭上すれすれを越え、口を開こうとした大地の精霊の胸に当たった。そこへ短刀が突き刺さり、木の実の殻でできた小瓶は、真っ二つに割れる。中に入っていた鮮血が、大地の精霊を赤く染める。 オニールの言っていたとおり、大地の精霊は弱ったらしい。宙に浮かぶほっそりとした姿が、ゆらゆらと揺らめく。 いつの間にか姿を現していたレルディンが、その精霊の土色の体を、魔法のかかった細剣で素早く優雅に薙ぎ払う。 大地の精霊は一瞬硬直した。そして、砂が吹き飛ぶように消えていった。 レルディンが剣を鞘に戻した音で、ナダとラウェルスは、いつの間にか止めてしまっていた息を吐いた。 「見事だ、ナダ」 ラウェルスは振り向いて言った。 「うん……あたし、本当にできた……」 自分自身も驚いていて、ナダは他人事のように茫然とそう答えた。だが、ラウェルスやレルディンと協力して一つのことを成し遂げたという確かな実感はあり、ナダは何よりもそのことが嬉しかった。 ラウェルスが台座に向き直り、両手を添えた。そして、言葉を唱えた。 「大地は守護。その温かな腕を広げ、全てを受け止めるもの。我ここに<大地の女王>エウケミュラの御名を称え、その恵みに感謝するものなり」 台座が光を発した。そして、今までの全ての祠と同じように、光が収束して台座の窪みに水晶玉が現れた。 ラウェルスはそれを手に取り、傍の床に落ちていた短刀を拾うと、ナダのところに持っていった。 「ほら、君の短刀だ。そして、これが最後の精霊の水晶だ」 ナダはまず短刀を受け取って腰に戻してから、水晶玉を両手でそっと受け取った。中心部が黄色に染まっている。 「地精の水晶……これで全部揃った……」 これを持ってメリトの廃墟の屍術士の元へ行けば……そうすれば、ナダは自分の身元を知ることができるかもしれない。自分が何者なのかを知る第一歩になるかもしれない。 ナダは目を閉じて、地精の水晶を高鳴る胸にそっと押し当てた。 |
||
![]() |
||
![]() |
![]() |